単身赴任のため、我が家は二重生活。2つの家を維持しなければならない以上、電気・水道・ガスといった固定費は2倍かかる。ただ、数年前にいわゆる「電力自由化」が始まってから、料金を支払う電力会社を自由に選べることになったのは御存じだろう。自分も電気代は少しでも節約するために、新潟でデフォルトの東北電力を赴任直後の1か月だけ利用した後に某新電力に移行した。安い電力料金に当初は大満足。しかし、年明けになり電力高騰の魔の手が忍び寄っていた…
電力価格の高騰
コロナ関連や米新大統領のニュースの一方で、あまり話題になっていないような気がするが、足許で電気料金の上昇が進んでいる。電力会社および売電事業者間で電気を融通する卸売価格の推移が下図のとおり。年末から1月に入って以降、かなりの上昇となっている。
国内電力価格高騰の要因として、以下の点が考えられている。
- コロナ禍によるステイホームによる外出自粛により、各戸における電力需要の高まり
- 年末にかけて全国的な寒波が到来(参考:下図の平均気温推移)したことによる暖房需要の急増
- CO2削減圧力から、石炭・石油火力発電からLNG(液化天然ガス)発電が主流(シェア40%超)となったが、石炭・石油と異なり長期的保存が難しい(気化してしまう)ため、備蓄コストがかなり高い。そのため、長期調達ではなくスポットで都度調達していたため、上記需要増により在庫がすぐになくなった。
- 注力していた太陽光発電が、冬場の日照量の低下に加えて発電所所在地の悪天候が影響
- LNG運搬船が通るパナマ運河で大渋滞となり、調達済みのLNG到着の遅れ、それによるLNG価格の世界的高騰
- 石油輸出機構OPEC減産による原油価格高騰を発端とした世界的な商品価格の上昇
新電力契約の悲劇(筆者の場合)
1月の下旬に流石に気になって確認してみたら、とんでもないことになっていた。
1か月で 5.2万円…。高すぎる…(泣)しかも、大して使ってないはずなのに土日の23,24日の利用料が爆増している…(汗)
色々と訳が分からず、にわかに頭が混乱する中、情報収集に奔走することとなった。
救済策はあるのか…?
かなり焦った。なにしろ、月の電気代がなんと5万円だ。4,5千円上がるのとは訳が違うし、次回もこのような感じだと10万円、電気代だけで年間50万円超になりかねない。課題は以下のとおり2つある。
- 5万円代という、満額を支払わなければならないのか?
- 1月23,24日に資料電力量が激増しているのは何故か?
この2点をクリアにしなければならない。
神は死んでいなかった
ここで奇跡が起こる。
①支払料金については、次回と次々回に限り3万円を上限に、各地域のデフォルトの電力会社で契約していた料金との差額を負ってくれる。(⇒支払額は通常の電力料金となる)
②1月23,24日は、データ取得元の東北電力が異常値を提出していたため、利用料が急増していたとのことで、いつの間にか修正。
東北電力さん、今回のミス、タイミング悪すぎませんか…(涙
ということで、今回の電気量は以下のとおり。
東北電力を契約していた場合の料金ベースと同等となり、数万円規模の多くの差額は電力会社が自腹で払ってくれることに。さらに例のおかしな利用料爆騰も誤データが修正されて、かなり「まともな」料金に収斂した。よかった、よかった。
おわりに
電気代高騰のニュースを見ているうちに次第に不安になって確認したところ、このようなゴタゴタガ発生し、紆余曲折したが取り敢えず、超高額な電気料金支払いは免れた。
また、足許、徐々に厳しい寒波も和らいでいること、遅まきながらLNG燃料が随時到着し、火力発電による電力供給余力が回復していることから、電力の卸売価格は徐々に落ち着きつつあることから、しばらくは今般のような混乱は避けられそうだ。
ただ、これが終わりとも限らない。今回はたまたま契約先の売電会社が「損失覚悟の自腹」で一人3万円を上限に損を出して契約者の繋ぎ止めに動いてくれたに他ならない。ほかの電力会社では破綻や同業他社への業務委譲、業務撤退に追い込まれるなど、まだまだ尾を引きそうな様相である。
今回の混乱はどちらかというと、日々の電気料金を節約するためにわざわざ調べて契約先を変えるような、節電リテラシーの高い消費者が犠牲になった形となった。ネットでは、元々なんにもしていなかった者が「電気代ケチったばかりにざまぁ」みたいなコメントが氾濫していたが、今回はたまたまそうなっただけで「怠惰」は罪だと個人的には考えている。話を戻すが、電力自由化については、良い面もある一方で、危機管理が甘く詰めるべきところが詰まっていなかったことが今回露呈し、このような極めてお粗末な混乱に至った。今回の教訓を活かした対策を疎かになると今回の二の舞だ。来期の冬季にこのような混乱がないよう、しっかりとした措置が取られるよう、当方も引き続き注視していきたい。
↓ 散々暗い話をしてきたが、今現在筆者が利用している新電力である「自然電力」。今回頑張って、筆者をはじめ利用者の支払高騰を身を呈して守ってくれた。今後も風力・太陽光などのクリーンなエネルギーを強化していくとのことなので、できる限り応援したい。