今回はちょっと趣向を変えて、日々の生活で気づいた「雑談系」で書いてみた。セールスで牛乳配達に触れて、久々に「昭和感」を感じたのでまとめる。
牛乳配達は突然に…
自宅でゆっくり寛いでいた(お気に入りのYouTubeを1.5倍速で見ていた)ところに、Amazonや楽天でポチッた覚えもないのに、急にドアチャイムが鳴ったので驚いた。宅急便ではないのに、マンションの1回で入り口ではなく、ドアの目の前の音だったので、すぐそこにいる状態であることに気付き、警戒度は一気に高まる。
インターホンに出ると
全く予想だにしていなかった相手に若干当惑しつつも、「試供品」という言葉と、「まあ、休日で予定もないし多少時間を聞いてもいいか」ということで出てみることにした。
出てみると、人の良さそうなおっちゃんが
と言ったのでありがたく試供品の牛乳3本を頂いた。意外なことに、セールストーク殆どなし。
ドアを閉めようとした時に、思い出したかのようにチラシを渡してきて、
ジワジワくる昭和感
牛乳配達、懐かしい響きだ…。
筆者の実家も、昭和の典型的な家だったので小学3年生に今の実家に引っ越すまでは、ボロい長屋風のアパートに住んでいた。そこには黒電話があったし、レコードプレーヤー、2層式洗濯機、親が大枚はたいて買ったVHSのビデオデッキがあって、玄関を出た軒先には例の木製の箱が設置されていて週2回くらい牛乳配達を契約していたのを思い出した。引っ越した先でもしばらく続けていたけど、結局飲みきれなくなってやめちゃったっけ。それでも、母方の祖父母(没)も最後まで契約していたのを覚えているし、妻の実家(関西の山奥)も未だに契約している。高齢者に刺さるビジネスなのかな。
試供品3本と共に受け取ったチラシをみてみると、その中にひと際異彩を放つ文書が入っていた。それがコチラ▼
なんだ、これは?手紙か?
そして、ジワジワと哀愁漂う文章…。
平凡な家庭でありながらも妻と子供達との間で前向きに奮闘する姿を想起させると共に、どこか懐かしい昭和感も漂う…。
そうか…!同情を誘発して「頑張っているから契約してあげようかな」と契約してもらうことを意図した作戦ということか。そうに違いない。確かに、人の良いお年寄りにとっては、これほど刺さる展開は無いだろう。
残念ながら、筆者にとってはシュール以外の何物でもないが、お年寄りをメインとしたビジネスにおいては、相当に考え抜かれたマーケティング戦略と言えるのではないだろうか…。
それでも自分は買わない
といっても、自分は投資対価を最重要視する投資家であり、東京に妻子を置いて単身赴任をしているサラリーマンでもある。リターンの低い無駄な出費は抑えなければならないし、それ以上に、中年40歳を目前に無駄な栄養を金をかけて取るわけにはいかないのだ。あくまで、その商品が有する栄養価、カロリー、健康寄与度が判断材料である。
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食生活を改善する決意と理由
筆者も今年で40歳。毎年配布される社内報(社員がほぼ全員顔写真・コメント付きで一覧される)を見ても、同期のほか周辺の先輩・後輩たちも年々太っ ...
渡されたチラシや牛乳瓶のラベルに成分表示表が書いてあったので、おっちゃんが推していたR-1を中心にみてみる。
試飲用として頂いた3製品と、普段自分が超絶愛用している英マイプロテイン社のインパクトホエイプロテインの成分比較表は下のとおり。なお、「ミルクで元気」だけ180mlと他の2製品より内容量が2倍弱あったので100ml換算で比較しやすいようにしてみた。
ポイント
- 炭水化物が意外と多め
- タンパク質がそれほど多いわけではない
- コスパでは到底プロテインに敵わない
自分の親を中心に、昔から「牛乳は健康に良い」と盲目的に信仰している人は多い。ところが、現代の栄養補助食品の筆頭格であるプロテインと比べるとどうだろう。
プロテインは、エネルギーこそやや多いものの、牛乳に対し5,6倍の大差をつけて凌駕するタンパク質量と炭水化物の低さ。それに比べて牛乳、ヨーグルトはどうだろう。
今回の検証には出していないカルシウムやビタミンはそれなりに豊富なのかもしれないが、タンパク質はそんなに取れないうえに、気が付いたら白米2口分くらいの炭水化物を接種してしまっているといえる。ちなみに、本や科学者にもよるが、乳酸菌はヨーグルトや牛乳を少しとったくらいでは腸内環境は大して変わらないため、むしろ他の食事とトータルで炭水化物の取り過ぎになるリスクの方が高い。
それに筆者は、牛乳に含まれるビタミンやカルシウムはサプリで一回3種類、計20円程度の少額で牛乳以上の普段取りづらい栄養を含めてバランス良く栄養摂取を実施している。したがって、残念ながら今回の牛乳配達は筆者の食生活に入り込む余地はないことが明らかになった。
牛乳配達は売上増加中
ということで、筆者のライフスタイルには合わなかっただけのことである。ここで強調して申しげたいのは、牛乳配達という業態をディスる意図は全くないということである。とはいえ、上記で少なからずサゲ記事のような展開になってしまった点も否めないので、ここからはフォローの意味でも牛乳配達が意外と社会的なニーズを捉えて業績を伸ばしている事実についてスポットを当てさせていただきたい。
現在、牛乳配達はなんと546万軒の契約があり、牛乳大手で国内シェア45%を有する明治乳業だけでも10軒に1軒は牛乳をとっていることになる。ここからは、明治乳業に限った話にはなるが、ピークは1976年の約350万軒。そこからスーパーとコンビニが増えて、1980年代に約120万軒まで落ち込んだ。しかし90年代に宅配専用商品を作って営業力を強化して、また250万軒までV字回復したとのこと。
回復できた要因としては宅配で毎日飲み続けられるようにした「習慣化しやすい風味」にこだわった味作りをした「宅配専用商品」を開発したうえで営業強化した努力の賜物だった。ちなみに、栄養成分を強化していない無調整の牛乳は、スーパーとの差別化が難しいため、あまり売れていない模様。いわれてみればそうか。
ちなみに牛乳配達と聞くと「コーヒー牛乳」や「フルーツ牛乳」のイメージがあるが、宅配を契約する顧客は健康志向の人が多く、健康価値を訴求する商品のほうが売れるらしい。残念ながら、昭和生まれの我々が大好きだったフルーツ牛乳はなくなってしまい、銭湯でド定番のコーヒー牛乳の出荷数は少なくなっている。
牛乳配達の箱も、
のような木製の箱のイメージがあるが、現在は▼のように随分と現代的なプラスチック三層構造の箱になっている。
昔のタダの木の箱に比べて圧倒的に保冷効果が高く、蓄冷材を入れれば気温40度の中でも8時間持つとのこと。それによって昼や夕方の配達も可能となったことから、働き世代の若い世帯でも安心して牛乳をとることができるようになっている。
そういう意味で、頻繁に買い物に出られないお年寄りや忙しい共働き子育て家族には良い選択なのかもしれないし、最近になって伸びてきている要因かと思う。
それでも自分は契約しない。単身赴任で日々の各種栄養摂取や生活リズムを、自由度高く制御できる身分でもあること、家族を犠牲にせずにストイックめな食事習慣が実現できることから。
牛乳配達のオジサンも、最初は哀愁漂う「気の毒だから、契約してあげよう」的な雰囲気だったけど、調べていくうちに牛乳配達のビジネスもそれなりに成り立つ商売なんだな、と妙に納得したうえで、例の手紙?はあくまで契約増を企図したれっきとした「戦略」だと思えてきて、当初抱いた同情的な気持ちはすっかりなくなってしまっていた。