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【解説】日銀による『ルール変更』について

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【解説】日銀による『ルール変更』について

これまでの記事で、日銀の金融政策に係る効果や狙いといった概念的な部分から始まり、具体策として、当金庫が保有する日本銀行の当座預金にかかる付利ルールや、今年度から適用開始された特別付利制度(OHRルール)、日銀の金融機関向け資金供給(融通)制度についてご説明した。

ところが、最近になって昨年の2021年11月に「OHRルール」、12月に「コロナオペ」について矢継ぎ早にルールを途中変更する旨を突然発表した。

筆者が勤務する地方金融機関も両制度をかなり利用してきたため、少なからず影響を受けることになる。今回の記事では、両制度のおさらい、ルール変更内容、金融機関への影響について説明したい。

特別当座預金制度の変更

おさらい

地域金融機関(地銀と系統金融機関(信金・信組・労金・JA))が対象で、メガバンクや政府系、系統中央機関は対象外。

経費削減や収益向上、経営統合(合併等)によって経営の効率化に取り組み、一定の条件を満たした金融機関に当座預金残高の付利を+0.1%するもの。

制度適用の条件

・経営統合が決定した場合

・経営基盤の強化が確ことになると

⇒具体的には、OHR(Over-Head-Ratio、経費÷業務粗利益)あるいは、経費率の改善率が2019年度比で下表の水準を達成した場合

付利の対象

  • 基礎残高   :+0.1% ⇒ +0.2%
  • マクロ加算残高:+0.0% ⇒ +0.1%
  • (法定準備所要額、政策金利残高は対象外)

筆者の勤務する銀行は、2020年分のOHRが2019年度比で▲1%の水準をクリアしたことが、8月25日付通知により日銀に認可された(各店各部の経費抑制活動(OHR中の分子の低減)に加えて、日頃の営業活動による収益増加(同分母の増加)が大きい)。

これによって、去年2021年9月15日からの付利期間から翌年である今年2022年8月分の付利期間までの日銀当座預金残高に通常の付利に加えて+0.1%の付利が付加されている。

ルール変更内容

〇ポイント

現状以上の特別付利適用を停止しつつ、2022年4月以降の特別付利が適用される額(付利の計算対象となる日銀当座預金残高)を大幅に圧縮

〇特別当座預金制度の適用額の圧縮

対象日銀当座預金残高の引下げが行われ、ほぼすべての対象金融機関にとって、特別付利適用額の減少につながる。

特別付利(+0.1%)の対象となる日銀当座預金残高については、下表のとおり。

なお、地域金融機関(特に信用金庫)では、変更前の算出方法で②>①、変更後の算出方法のもとで当面③>④※となるケースが大半であると考えられており、今回の制度変更は実質的にからへの変更であるといえる。

※2019年度、信用金庫においては利回り0%であったマクロ加算残高を積むよりも、系統預金(信金なら信金中金、JAなら農林中金)への預け金(定期預金)に預入することが、利息がついて一般的であるため。

制度の変更自体は11 月から適用されるものの、期中の金融機関の資金計画に大きく影響することが考慮されることから、2022年3月までは、新ルールによって算出された特別付利の上限が変更前の上限を下回る場合※、10月積み期の上限が適用される、との経過措置が盛り込まれた。

※前述のとおり、ルール変更によって適用残高が増加する金融機関はほぼ存在しないとみられることから、実質的に全金融機関が「経過措置」の対象となるとみられる。

本件見直しに至った背景(筆者見解)

具体的に明言はされていないものの、主に以下の点ではないかと考えられる。

・日銀による同制度の利息支払額が700億円という当初の想定を大幅に増える見通し(1,000億円程度)となったこと(日経新聞による指摘)

・日銀当預(マクロ加算残高)を積むことを目的にコール市場等での積極的な調達が行われることでTONA(無担保コール翌日物レート)に上昇圧力がかかってしまう

→イールドカーブの起点であるTONAがプラス金利に上がるようなことがあれば、マイナス金利政策の目的が阻害される。

・地域金融機関のマクロ加算枠の拡大により、日銀は基準比率の引下げを余儀なくされている。これにより、特別当座預金制度の「対象外」のオペ選定先、あるいはコロナオペを活用できない(していない)先のマクロ加算残高は小さくなるため、不公平感が生じ易くなっていたこと。

対象の地域金融機関への影響

・特に来年度以降、変更前の当制度体系を前提とした収益見込みは修正を余儀なくされると考えられる(来年度以降、当該ルールで得られた日銀付利の収益は当てにできなくなる)。

・4月以降、特別付利を前提に日銀当座預金に残高を積み増すことを目的とした資金調達需要の減退が見込まれる(OHRをクリアしていれば、外部から資金調達して日銀に入れておけば付利がついたものがつかなくなるため)。

マクロ加算枠を広げれば広げただけ付利対象が増える(当該制度で 元々0%⇒+0.1%になっていた)わけではなくなったため、マクロ加算枠を広げる動きも限定的となることが予想され、その利用実績に応じて同枠が拡大する日銀の資金供給手段への利用ニーズが後退する。

・「キャッシュつぶしニーズ」(どこにも置いておけない収益の生まない資金の逃避ニーズ)の復活により、信金中金への預け金や、利回りの低い国債への消去法的運用回帰の動きが想定される。

・付利ボーナスを期待して、近隣金融機関との事業統合やOHRクリアを目指していた金融機関は、当該条件達成に対するインセンティブが相当減退することが予想される。

適用金融機関への影響

適用されている金融機関の殆んどは、日銀当座預金は、政策金利残高(マイナス金利が課され始める水準の高い残高)まで当座預金残高を積んでいるわけではないため、実質的に法定準備所要額を除く当座預金残高すべてに対し、+0.1%の上乗せが去年の9月から今年の8月まで付加されるはずだった。

(今年度のOHR水準がクリアされれば、さらに付利ボーナスが1年延長)

しかし、上記(2)のルール変更内容のとおり、10月以降はいくら残高を積み増しても、3月までは10月時点の残高が付利ボーナス対象の上限となった。

さらに、今年4月以降は一気に対象となる残高が減少することとなります。

したがって、来年度以降はOHRルールの付利ボーナスは、かなり限定的なものとなってしまうほか、2021年度のOHR水準をクリアしたとしても今年9月以降の付利ボーナスも同じく限定的なものとなってしまう。

コロナオペの制度変更

おさらい

以前の記事『【解説】💵日銀の資金供給(融通・貸出)制度について』の6.でも解説しているが、改めてまとめると以下の表や図のとおり。

【解説】💵日銀の資金供給(融通・貸出)制度について

以前に、金融機関(銀行や証券、保険会社など)が保有する日本銀行の当座預金(「日銀当預」とも呼ばれる)にかかる付利ルールや、2021年度から開 ...

続きを見る

こちらは、上記の特別当座預金制度と違って、地方金融機関限定ではないので、東京や中央の金融機関も参加できる制度。

ルール変更内容

従前までは、上記のように利用すればするだけ、日銀に預けている当座預金残高のマイナス金利ゾーンが遠のくばかりでなく、利用した額に応じて「特別ボーナス」が得られるオイシイ制度だった。

ところが、昨年末2021年12月17日の日銀政策決定会合で、以下のとおり決定された。

(以下、同日会合内容抜粋)

日本銀行は、本日の政策委員会・金融政策決定会合において、中小企業等の資金繰りを引き続き支援していく観点から、新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム の一部について、以下のとおり、期限を2022 年9月末まで半年間延長することを決定した。

  • 新型コロナ対応金融支援特別オペ(全員一致)
  1. 感染症対応にかかる中小企業等向けのプロパー融資分は、現行の取扱いのまま、 期限を半年間延長する。
  2. 感染症対応にかかる中小企業等向けの制度融資分は、2022 年4月以降、貸出促進付利制度上の付利金利を0%(カテゴリーⅢ)、マクロ加算残高への算入は利用残高相当額としたうえで、バックファイナンス措置として期限を半年間延長する。
  3. 大企業向けや住宅ローンを中心とする民間債務担保分は、期限どおり2022年3月末をもって終了する。

金融機関への影響

筆者の勤務先が利用しているコロナオペは、

・各店であげた事業先向け制度融資分(保証協会付き、上表①の制度融資分)

・民間債務担保分(当金庫からのコロナ関連融資に関わらず、金庫が保有する社債を担保に入れた見合いで借りた部分、上表②の部分)

にあたる部分が大部分を占めており、付利が継続されるプロパー融資分はわずかとなっている。

利用しているコロナオペ残高のほとんどを占める制度融資分と民間債務担保分について、現在は残高に対して0.1%の付利が付されていたものが4月以降付利ゼロになるほか、当金庫が保有する社債を日銀宛に担保に入れている見合いで借りている部分は返済することとなる(制度融資見合いの部分は2022年9月末まで)。

影響まとめ

  • コロナオペ残高×0.1%の月次利息の大部分がなくなる。
  • 4月より社債担保分、9月末に残り全てのコロナオペの返済を迫られる。

OHRルール(特別当座預金制度)は一応残る

筆者の勤務先銀行は、前述の1,2で紹介した両制度を活用することで、それまでに日銀から毎月受けていた利金(当座預金残高に対する利子)を例年よりも大幅に増加させることができた。

しかし、今年2022年の4月から1,2の両制度のルールが変更されることによって、毎月受け取る利金は大幅に減少。

ただ、特別当座預金制度(OHRルール)は、上記のとおりインセンティブは大分減退してしまうものの、当該制度は残ることになる。

つまり、毎年のOHR(経費÷業務粗利益)あるいは経費率の改善率目標を達成することで、日銀に認定してもらい翌年の当座預金にかかる付利を少し(今回この部分が縮小)増やしてもらう形は変わりません。

また、そもそも多くの地方金融機関が目指す中期経営計画にも、この目標を組み入れている銀行は多く、たいていは方針が変わらないので、引き続き、各部店における収益向上・経費抑制に努めていくスタンスは継続することになるとみている。

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